さまざまなひとが集まるシーンに寄り添う、あたらしいクラフトジン“Terroir
A”。蔵元の本田沙織さんをお迎えして、ボトルのデザインを手がけた岡田友香梨さん、コミュニティー・オーガナイザーの増田早希子さんとともに、硴とおばんざいの店アリクで店主の廣岡好和さんのお料理と一緒に、Terroir
Aの楽しみ方についてお聞きしました。
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増田
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これはジンだと思えないくらいさわやかですね。こうしてお鍋にジンを合わせて飲むのは、はじめてかもしれません。テロワール エーと読むんですね。
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本田
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はい。テロワールは、フランス語で「土壌」という意味なんです。日本酒の蔵元がつくったクラフトジンで、これまで日本酒のために土壌のことをずっと考え続けてきた酒蔵の特A地区の山田錦から生まれたお酒だと知ってもらいたくて。名前はこれ以外には考えられませんでした。
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岡田
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じつは私、ジンのジュニパーベリー感がすこし苦手だったんですが、これはすごく飲みやすいですね。
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本田
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ジンって、ジントニックなどのカクテルのイメージが強いせいもあって、バーで飲むものだと思われている方が多いと思うんですけれど、それはもちろんのこと、より日常の中でごはんと一緒に楽しめるジン、和食に合わせられるジンをつくりたかったんです。
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本田
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山田錦は兵庫県で生まれた酒米で、酒米の王様と言われるほど日本酒づくりに向いていて、いまは各地で育てられているんですが、兵庫の山田錦は他とどう違うかというと、徹底した品種管理のもとにある種籾田があることなんです。お米って、隣の田んぼで別の品種が育てられていると風にのって自然に品種交配してしまうので、そうした交雑がいっさい起こらない種籾田のもと、最高の環境でつくられた特A地区の山田錦というのは兵庫県にしかないんです。
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岡田
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そんなにデリケートなものなんですね。ボトルのデザインをご依頼いただいたときにも、そこは大事にされていましたよね。
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本田
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ボトルのデザインを2案、提案していただいて、もうひとつボタニカルな絵柄を生かしたものもすてきだったんですけど、やはり特A地区の酒米からできていることを伝えたかったので、こちらのデザインに即決でした。
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廣岡
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はい、これはジンのお湯割りです。しらすの沖漬けと江戸前の真牡蛎の昆布〆といっしょにどうぞ。
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増田
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うわ~、飲む前からすごい薫る! めちゃくちゃいいですね、お湯割り。ジンではじめて飲みました。しかも、お料理に合いますね。
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岡田
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お米のいいところがいちばん感じられて、寝る前に飲みたいやさしさです。
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廣岡
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ジンのほうに華やかな印象があるので、料理は素材のよさを引き出していこうと思い、今日の献立を考えました。Terroir
Aのお米からつくられたジンならではの甘みを生かすのには、あたためるとより持ち味が引き立つように思って、お湯割りにしたら、すごく合うなって。あとは日本酒で割ったものも、おいしいですよ。
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本田
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ボタニカルは、播州産の青みかんとペパーミントでさわやかさを加えて、ブルーベリーが全体のまとめ役として受けとめてくれるようにしてつくりました。あくまで主役はお米で、特A地区由来のベーススピリッツを引き立ててくれるためのお化粧としてのボタニカルなんです。
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廣岡
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龍力という歴史のある日本酒の蔵元がこうして斬新な挑戦をはじめるに至ったのはどうしてなんですか。さらに、このさきにどういうことを考えているのか、聞いてみたいと思っていました。
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本田
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龍力は創業100年を超え、創業時から一貫して「いい素材を使う」ことにこだわってきました。クラフトジンを造る酒蔵はいくつかあるのですが、龍力が造る意味は、このTerroir
Aで『特A地区山田錦』の魅力を伝えることなのかなと。それとともに、日本酒を知ってもらうきっかけにもなれたらと考えています。
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増田
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大事にしていることは、ジンも日本酒も同じなんですね。
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本田
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はい、まだ実験段階ではあるものの、さまざまな発酵の可能性を探るなかで、日本の酒蔵として、あたらしい突破口が見えてきてくれたら、という思いでいます。